★養成所へ通う前に★

 声優になりたいのであれば、なるべく早く行動を起こそう。地方在住者は上京するしかないし、首都圏在住者ならすぐにでも養成所・学校へ通うべきだ。
 しかし、中には、まだ学生のため、すぐに行動を起こせない場合もある。
 このコーナーでは、そういった人のために、養成所・学校へ通う前の準備を紹介する。

 

■体力を向上させよう!■

 声優=俳優は、体育会系である。発声のためには、体力が必要となるからだ。全身の筋力がなければ、きれいに立つことすらできない。
 まず、体力をつけよう。
 持久力・瞬発力・心肺機能、そして、それら各能力の調整力柔軟性も大事だ。おすすめは、水泳、マシントレーニング、エアロビクスなど。
 フィットネス・ジム市民スポーツセンターなどを利用し、トレーナーの指導のもと、基礎体力全般を向上させよう。
 リズム感を同時に鍛えられるジャズダンスもおすすめである。

 

■国語能力を高めよう!■

 声優=俳優には、台本を読み解く高い国語能力が求められる。
 その第一歩は読書である。マンガやライトノベルではなく、国語便覧に掲載されている古今東西の名作を日常的に読んで欲しい。台本を読み解く解釈力は、読書の積み重ねによる。
 戯曲(演劇の台本のこと)でおすすめは、ギリシャ悲劇・シェイクスピア・ラシーヌ・モリエール・チェーホフ・ドストエフスキー・井上ひさし、など。
 漢字を読む能力も大事だ。具体的なレベルは漢字検定3級当用漢字なら全て読める=新聞をスラスラ読めるレベルに達してほしい。漢字検定の過去問題集は書店に売っているので探してみてほしい。(日本漢字能力検定のhp

 

■お芝居を観よう!■

 声優とは、プロ俳優のマスコミ仕事のひとつだ。
 漫画家になりたいのに、漫画を読まない人はいないであろう。小説家になりたいのに、小説を読まない人もいない。同じく、俳優になりたいのに、お芝居を観ない人はいないはずである。
 この場合の芝居とは、学生演劇やサークル演劇ではない。プロ俳優の芝居を観て欲しい。なぜなら、声優とは、プロ俳優の仕事だからだ。プロを育てられるのは、プロだけである。アマチュアに育てられたプロはいない。
 おすすめは、演劇集団・円、加藤健一事務所、劇団四季のストレート・プレイ、劇団ムーンライトなど。

 

■行儀・礼儀をしっかりしよう!■

 声優=俳優が属する演劇界は、三十代までは若手、四十代は中堅、五十代をすぎないとベテランとは呼ばれない。舞台に立っている最年長は七十代という世界だ。そんな世界において、発声はおろか滑舌も未熟な十代・二十代の志望者は行儀・礼儀といったものを求められる。
 敬語立ち居振る舞いといったものを、日常から気をつけなければならない。
 具体的には、ビジネス・マナー集などを書店で購入して勉強してもらいたい。

 

■ありがちな質問■

ここでは志望者から寄せられるありがちな質問を列記した。

 

■どんな部活が役立ちますか?■

 まず、演劇部はやめておきなさい。私は今まで百人以上の演劇部出身者を見てきましたが、演劇部で身につけたことが役立っている人はひとりも見たことありません。それどころか、演技や台詞に悪い癖がついてしまっているくらいですね。
 声優は、プロ俳優のマスコミ仕事です。アマチュアの指導によってプロになれた人などいませんよ。そもそも、養成所に何年も通っていたって、発声すら満足にできない志望者が8割を超えるんですよ。ましてや、学生演劇で……(苦笑)
 おすすめの部活は運動部。できれば、水泳部がいいんですけどね。水泳部がない場合には、なんでもいいから、運動部に入って身体を鍛えてください。

 

■合唱部はどうでしょうか?■

 合唱をやっていた人は「発声に自信があります」と言うんですがねえ〜。実際には、発声練習用の発声は朗々としていても、芝居につかえる発声ではないんです。合唱や声楽では、声を裏に回しますが、役者は前に声を出す地声発声が基本。
 合唱部出身者や声楽出身者で、その経験が発声に役立っている人は皆無です。
 それらを承知の上で、音感を鍛えるために声楽をやるなら有効です。まあ、音感を鍛えるためなら、楽器演奏でもいいんですけれどね。

 

■自分でアニメ・アフレコの練習をするのは?■
■ネット声優、アマチュア声優は実績になる?■

 完全に無意味! マイク・ワークの訓練なんてものは、芝居をできるようになってからでも、十分に間に合います。プロから見た時は、ミーハーな悪い趣味だとしか思えませんね。
 声優とは、プロ俳優のマスコミ仕事。アマチュア声優などありえません。ネット上で、遊びで声優をやっている分には個人の自由ですが、ギャラをもらってやる場合は、業界の秩序破壊です。声優を敵に回してると思われてもしょうがないでしょうね。

 

■独学で声優の勉強はできますか?■

 できません(きっぱり)。
 アマチュア役者やタレントならともかく、プロ俳優の演技とは、発声・滑舌・解釈・集中力などを組み合わせた総合的なものなんです。
 七十歳を過ぎても俳優修業に勤しむ大ベテランがいるというのに、十代や二十代のオコチャマの独学でどうにかなるわけがないでしょう。

 

■高校進学しないで声優の勉強を始めたいのですが?■

 高校に進学してください。高校生でも通える養成所・学校もあります。
 本来、俳優に学歴は関係ありません。しかし、平成8年における高校進学率は96.8%。高校進学が常識になっているわけです。養成所・学校の中には、高卒しか入学させないところや、夜学や大検は認めないところもあります。
 それに高校を卒業しておかないと、アルバイトがかなり限定されますよ。声優としてプロダクションに正所属するには、修業を始めてから5〜8年はかかります。その間、みんな、バイトしながら生活しなければならないのだということを忘れないように。
 志望者のうち、声優として生き残れるのは1万人に1人。声優になれなかった9999人となった時のことを考えてみようね……


■小学生や中学生でも入れる養成所・学校は?■

 ありますけれどもねえ。しかし、私は、小学生や中学生のうちから養成所・学校に通ったり、児童劇団に入ることはおすすめしません。
 これまったくの私論ですが、小学生や中学生のうちは、普通に子どもをやっていてほしいんですよ。
 運動や勉強をしたりサボってみたり、友達と遊んだりケンカしたり…… そういう普通の生活の中でなければ得られない経験というのが、人間にとっては大事なんです。そして、人間にとって大事なこととは、人間を演ずる役者にとっては、とっても大事なんですね。
 声優=俳優になるための勉強は、16歳以上になってからで十分に間に合います。それまで、どうしても、なにか準備をしたいというのであれば、運動部に入ってスポーツ少年・少女でもやっていてください。

 

■声優オーディションは?■

 声優の仕事ができるプロ俳優となるには、どんなに短くても3年、カンのいい人で5年、普通は8年ぐらいかかります。なのに、今までチャンとした勉強をしたこともない素人が、なぜ、声優となれるでしょう?
 新聞・雑誌に大きな広告を載せている声優オーディションのほとんどは、実際には生徒募集のためのものです。中には悪徳商法のようなものもありますのでご注意ください。ウマい話には裏がある。騙されないようにしてくださいね。
 イベントとしてのオーディションもありますが、優勝者が決まっている「出来レース」の噂は絶えませんし、実際には全くの素人ではなく既に勉強している人たちばかりが残っているようですね。
 私自身、講師として、どこぞの声優オーディションで優勝だか準優勝だかして自信満々の志望者ってのを教えたことありますが…… ゼーンゼン駄目! オハナシにならない能力なのに、天狗になっちゃっていて、「あ〜、こいつに芽はないな」とシミジミ思ったものです。
 なお、養成所・学校などでやっている特待生オーディションについては、それぞれの事情があるので、一般的なことはいえません。でも、やっぱり、私はしっかりと俳優修業することがイイと思いますけどね。
 声優となるための近道なんてものは、どこにもありません。急がば廻れ。地道に頑張るべきです。

 

■私に才能はありますか?■

 わかりません(笑)。
 ただ、これだけはいえます。才能は、努力して磨くものであって、生まれついてのものではないんです。もし、才能があるとしたならば、それは努力する才能です。

 

■外見も大事ですか?■

 大事です(笑)。
 が、これは、なにも美男美女であれ、という意味ではありません。髪型・服装については、清潔にして、似合ったものを着こなしてください、ということです。

 

■歯列異常、顎関節症、脊椎側湾症、腰痛について■

 いずれも治療(矯正)するしかありません。お医者さんに行って相談してください。
 どれも時間がかかりますから、早めにこしたことはないですね。

 

■その他■

Q.夏休みに、専門学校の体験授業に行ったら、「今すぐに決めないと、定員はすぐに埋まる」と急かされましたが……

 夏休みで定員オーバーになる専門学校声優科なんてありません。それはセールストークです。そんな嘘をついてまで生徒を集めようというところはやめた方がいいでしょうね。

Q.専門学校の体験授業や学校説明会には行った方がいいんですか?

 行ってください。ただし、専門学校の場合は、なるべく12月までに。年が明けると、どこの専門学校も数字を上げるために、営業が強引になります。個別面談で何十分もかけて口説き落とすような専門学校まであるほどです。1月〜3月に行く場合は、それまで調べた中から候補を厳選しましょう。

Q.専門学校に通う予定ですが、新聞奨学生はどうでしょう?

 新聞奨学生は、あまり勧められません。学校をやめたり、変えることができませんからね。実際、多いんですよ、新聞奨学生を後悔している人は。やめても、借金が残るだけですから、ホント、悲劇ですよ。

 

最後に……

 私は、みなさんが声優を志望することを積極的には支持しません。
 それどころか、できれば諦めてくれることを、大人としては望みます。
 このhpをよく読めばわかりますが、志望者のうち99.99%は夢破れる業界です。
 「やってもみないうちから諦めるのはイヤだ」という気持ちはわからないわけではありませんが……
 それでも、やっぱり、よーく考えてからにしてくださいね。できれば、毎日1回、10分は「本当に自分は声優になりたいのか?」と考える時間をつくってみてください。

 進学や就職からの逃げ道としての声優志望だったら、さっさと諦めてください。
 そんな根性ナシがどうにかなるほど、この業界は甘くありません。そんな人には、志望者の末席にすらいてほしくありません。どうせ、消えていくんですがね。真面目な志望者であったり、講師の立場からすると邪魔なんですよ、とっても。

 辛くて、苦しい業界ではあっても、けっして華やかな業界ではありません。
 アニメ・ファン、声優ファン、コスプレイヤーの延長線上のままでどうにかなる業界でもありません。それどころか、ファン意識からいかに早く脱却し、本当に芝居が好きになれるかどうかを問われます。

 諦められるようなら、諦めてください。お願いですから。
 どうしても諦められないというのであれば、とことん頑張ってください。
 1日2時間の稽古は、維持のため。1日3時間、4時間から、始めて成長のための稽古となる世界を頑張り抜ける意識の持ち主だけが成功する業界だということを忘れないでくださいね。

安達成彦